いつもの穏やかな空と、空気。
そしてこの森。
何かあるとついここに足を向けてしまう。
私は大きな樹の前でいつものように彼を見上げた。
まるで、空を見上げるかのように。
枝を広々と伸ばしているためか
彼の周りにはたくさんの木々がいるのに、傍に寄り添うような木は一本もいない。
そんな大樹が、今日もここに在る。

「あなたも一人ぼっちなの?」
そう問いかけると、風が私の頬を優しく撫でた。
穏やかな風だった。
寄り添うように腰を下ろし、深く呼吸を繰り返す。
それからどれだけの時間が経っただろう。
そろそろ帰ろうと立ち上がり、
大樹に背を向けると少しだけ強く風が吹いた。
髪を片手で押さえる。私はなんとなく振り向いた。
そこには青々とした葉があった。先程まで座っていた場所だ。
じっと見つめる。
こんなにもしっかりしている葉なのに、そんなに簡単に枝から離れるものだろうか。

そっと大樹を見上げた。
彼は、いつもと変わらない出で立ちだった。
「栞にしようかな」ぽつりと、言葉がこぼれる。
私はその葉を拾い上げた。
そうしていつものように微笑み、その場を後にした。
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